大会前のメディカルチェック
メディカルチェックリスト
マラソンレース中のランナーの心停止は様々な状況で発生するものと思いますが、「3~4時間を切るペースで走行するランナー」、「スタート直後の地点」、「若い世代」にも事故が生じています。「まさか自分には起こらないだろう・・・」という思い込みが心停止のリスクを放置することになるかもしれません。
どんな場合にも対応し得る救護体制をつくりあげることが運営を行うものとして必要なことであるのは言うまでもありませんが、ランナー1人ひとりの日々の準備や健康チェックも極めて重要です。大阪マラソンに参加する前に、以下についてぜひご確認ください。
大会前
第一に、次のいずれかに心当たりがある方は、レース参加の可否について、かかりつけ医など身近な医師とよく相談することが必要です。レースに参加する場合は自己責任で判断ください。
- ☑心臓病(心筋梗塞、狭心症、心筋症、弁膜症、先天性心疾患、不整脈など)の診断を受けている、もしくは治療中である。
- ☑突然、気を失ったこと(失神発作)がある。
- ☑運動中に胸痛、ふらつきを感じたことがある。
- ☑血縁者に‘いわゆる心臓マヒ’で突然に亡くなった方がいる(心臓突然死)。
- ☑最近1年以上、健康診断を受けていない。
次の項目は、心筋梗塞や狭心症になりやすい危険因子です。当てはまるものがあれば、身近な医師に相談してみてください。
- ☑血圧が高い(高血圧)。
- ☑血糖値が高い(糖尿病)。
- ☑LDLコレステロールや中性脂肪が高い(脂質異常症)。
- ☑たばこを吸っている(喫煙)。
(日本陸上競技連盟医事委員会「市民マラソン・ロードレース 申し込み時健康チェックリスト」から抜粋)
大会当日
また、レース当日、次のいずれかに1つでも当てはまる方は、決して無理をせずにレース参加を中止するか、少なくとも慎重に臨み、レース中に体調に異状を感じることがあれば、勇気をもって棄権することも重要です。
- ☑熱がある、熱感がある。
- ☑疲労感が残っている。
- ☑昨夜の睡眠が充分にとれなかった。
- ☑レース前の食事や水分をきちんと摂れなかった。
- ☑かぜ症状(微熱、頭痛、のどの痛み、咳、鼻水)がある。
- ☑胸や背中の不快感や痛みがある。動悸・息切れがある。
- ☑腹痛、下痢がある。吐き気がある。
- ☑レース運びの見通しが立っていない。
(日本陸上競技連盟医事委員会「市民マラソン・ロードレース スタート前チェックリスト」から抜粋)
ランナーの皆さんへ協力のお願い
~一次救命処置の方法を学ぶ~
そして、お願いです。心停止の場合、一刻も早くAEDの処置を行うことが何よりも肝心です。AEDは電源さえ入れれば、音声で使い方をガイドしてくれるのでだれでも簡単に操作できます。また、AEDを準備するまでの間、胸骨圧迫を絶え間なく行うと救命率はより上昇します。もしも、ランナーが心停止で倒れたとすれば、その時、一番近くにいるのは同じランナーである皆さんですから、ランナー自身が一次救命処置の技術をもつということはとても大切なことです。
大阪マラソンでは、心肺蘇生の中で最も重要な胸骨圧迫の方法とAEDの使い方などを学ぶ「大阪マラソンPUSH講習会」を開催しています。ぜひ講習会を受けて、その使用方法などにふれ、そして自分自身の身につけていくよう取り組んでみてください。皆さん、ランナー全員がお互いに命を支え合える安心・安全なマラソン大会を共にめざしていきませんか。
いざという時のために
~アスリートビブスへの記載~
ランナー受付時にお渡しするアスリートビブスの裏面には、①「緊急連絡相手」、②「既往症」、③「服用できない医薬品」を記入する欄が設けてあります。第5回大会の事故でも、この情報のお蔭で近親の方と速やかに連絡が取れました。あなたの命を守るために必要な情報です。お手数ではありますが、どうかこれらの欄はもれなく記して、その上で、安心してレースに臨むようにしてください。
大阪マラソンに参加されるランナーの皆様の完走を心からお祈りしています。
大阪マラソンの救命事例
大阪マラソンでは、過去7件の心停止の事故が発生しています。
全ての事故において、スタッフらの懸命の救護などにより尊い命が救われ、社会復帰されています。
マラソンは手軽に楽しめる一方、高いリスクもあるスポーツです。
救命事例からも学んでいただき、自身のメディカルチェックにつなげて下さい。
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事例①口から泡沫化の唾液を吹きながら、死戦期呼吸を経て心停止
<第8回大会>
午前9時30頃 晴 気温13.0度 湿度64%
午前9時40分頃、1.9㎞地点において40代の男性に起こりました。1.9キロ地点の仮設トイレ前にて、突然の意識消失の上転倒。口から泡沫化の唾液を吹きながら、死戦期呼吸を経て心停止。メディカルランナーの看護師がランナーに気づき胸骨圧迫対応。その直後に、一般ランナーやメディカルランナーの救急救命士もランナーに気づき合流。同タイミングに、現場に配置されていた警察官が、隣接のホームセンターにAEDなどを借用し合流。AEDショック1回にて蘇生、意識回復して救急車に搬送。なお、傷病者本人によれば、数年前からハーフマラソンに出場して、今回、初めてフルマラソンに挑戦。過去からも特に心電図等も異常なかった。全く自覚もなく突然のことであった。
本人はその後、検査入院等を経て無事に社会復帰している。 -
事例②呼吸はほぼなし、意識なし、頚動脈が触れないため心肺停止と判断
<第7回大会>
午前9時スタート時 晴 気温13.1度 湿度50%
午前11時頃、22.5km地点において、20代の女性に起こりました。倒れているランナーを発見した通りがかりのランナーが手振りで救護スタッフを呼び、メディカルランナーも駆けつけた。仰向けにしたところ、呼吸はほぼなし、意識なし、頚動脈が触れないため心肺停止(CPA)と判断して、胸骨圧迫を開始。同時に119番通報とAEDを要請した。3分程度の胸骨圧迫で脈、意識が改善したため、取りにやったAEDは使用せずに済んだ。その後、救急車で病院まで搬送された。なお、傷病者本人の言によれば、学生のときから長距離を走っておりレース中に倒れるような心当たりはなかったが、振り返ってみれば、直近のマラソン大会で胸が苦しくなってしゃがみ込んだことが前兆であったとのことだった。
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事例③大会当日の健康状態は良好だったが、レース中に倒れる「心停止」
<第5回大会>
午前9時スタート時 晴 気温19.0度 湿度39%
スタート間もない午前9時17分頃、0.65㎞地点において70代の男性に起こりました。沿道整理のボランティアスタッフが背面警備をしていたところ、ドサッという音が聞こえたため振り返ると、倒れているランナーがおり、そのとき、既に別の一般ランナーが駆けよって胸骨圧迫を実施していた。そのボランティアスタッフは、「心停止」の叫びを聞いたため、直ちに119番通報した。その後、差し掛かったメディカルランナー2名も加わり、救急車が到着するまでの間、3名が交代で胸骨圧迫等をこなし、到着した救急隊のAEDにより傷病者ランナーの心拍は再開した。なお、傷病者本人の言によれば、自身は、大会当日の健康状態は良好で、レース中に倒れるような自覚症状も心当たりもないとのことだった。
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事例④レース中に倒れる「心停止」。救護スタッフによる救命処置の引き継ぎ
<第5回大会>
午前9時スタート時 晴 気温19.0度 湿度39%
スタートから2時間強が過ぎた午前11時14分頃、32.8㎞地点において30代の男性に起こりました。その男性は快調に走っていたところ、いきなり倒れられ、その様子を見た沿道整理のボランティアスタッフが「倒れた」と声を発すると、その声に反応して、付近にいた競技審判員ら大会スタッフ2名が駆けより、直ちに胸骨圧迫等を開始した。他方、声を発したボランティアスタッフは、急ぎ直近地点に配置されていた救護スタッフの所までAED持参の要請に走った。そして、駆けつけた救護スタッフ3名が救命処置を引き継ぎ、そのAEDにより傷病者ランナーの心拍は再開した。なお、傷病者本人の言によれば、自身では、やはり倒れるような心当たりはないとのことだった。