岡田先生の安全に走ろう講座

岡田 邦夫(オカダ クニオ)

監 修:岡田 邦夫(オカダ クニオ)

大阪マラソン医事・救護専門部会委員長
公益財団法人日本体育協会公認スポーツドクター
公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会委員

  • マラソンで起こるケガや病気
  • セルフレスキューについて
  • 心臓マッサージとAED
  • ランナーの安全10ヶ条

心臓マッサージとAED

AEDとは

スポーツ中に発生する突発的な心臓停止は、心室細動という不整脈を起こしているケースがほとんどです。通常、心臓は筋肉を動かして心室の収縮と拡張を繰り返すことで、血液を肺や全身に送り出します。健康な状態だと心臓は規則正しいリズムで拍動しますが、心室細動を起こすと、心臓各部の筋肉がバラバラに細かく震えるような状態になり、全身に血液を送り出すことができなくなります。この状態をそのまま放置しておくと、心臓は規則正しいリズムを取り戻すことができなくなり、心臓自身の機能をも停止することになります。
心室細動は生命に関わる不整脈のため、規則正しい心臓のリズムに戻す除細動という処置を一刻も早く行う必要があります。この除細動を行う唯一の手段が心臓への電気ショックで、そのために開発された器械がAEDです。AEDはAutomated External Defibrillatorの頭文字をとったもので、正式名称を自動体外式除細動器と言います。以前、除細動処置は医師しか許されていませんでしたが、2004年から一般の人もAEDを使っての除細動処置ができるようになりました。一般の人が除細動を実施することをPAD(Public Access Defibrillation)と言います。一般の人を対象にしたAED講習会は広く行われています。講習を受けていなくてもAEDを使用することはできますが、マラソンレースに参加するなら万一に備えてAED講習会は受けておきたいものです。

AEDの使用法

心室細動を起こして心臓が停止した場合、3分以内に電気ショックを与えて除細動を行えば4人中3人は命が助かると言われています。大事なことは、1秒でも早くAEDの処置を行うことです。AEDは電源さえ入れれば、器械が音声で使い方をガイドしてくれるので、初めての人でも簡単に操作できます。心臓が突然停止すると、人は数秒後には意識を失います。ただし、意識を失っても脳卒中やけいれん、低血糖、脳貧血などの場合は心臓が止まらないので、心臓が停止しているかどうか見極める必要があります。AEDは、心臓が停止しているかどうかの判断もしてくれます。音声メッセ―ジに従い、手のひら大のパッド(粘着シート状の電極)を胸の2ヵ所に貼り付ければ、AEDは電気ショックの必要性を正確に判断し、必要な場合は電気を流して心臓にショックを与えます。人が倒れて、AEDを準備するまでの間、CPR(胸骨圧迫と人工呼吸)を絶え間なく行うと、救命率はより一層向上するので、救命講習を受けて胸骨圧迫と人工呼吸の手法を覚えておくといいでしょう。

  • マラソンで起こるケガや病気
  • セルフレスキューについて
  • 心臓マッサージとAED
  • ランナーの安全10ヶ条
ページのトップへ