- 松本会長
- 日本人はチャリティ意識が低いとか、苦手っていわれます。私はそうは思わないのですが。
- 森さん
- かまえすぎるところがあるかもしれません。海外では、参加している人が楽しみながらチャリティに参加できる機会がたくさんあります。セレブと呼ばれる人たちが、自分たちの知名度や影響力をうまく使って、ファンを集めて、ガラパーティーやガラコンサートを開くのです。通常の楽しいパーティーであったり、コンサートだったりするのですが、終わってみればそれはちゃんとしたチャリティで、これだけの金額が集まり、ここへ寄付しますという報告もあって、さらに会場全体が盛り上がるという。寄付金だけがチャリティのすべてではありませんが、そういう場に参加してもらうことによって、こういったチャリティがあることを知ってもらう機会にもなります。
- 松本会長
- いい光景ですね。
- 森さん
- 日本と海外での意識の違いで言えば、私は学生の頃、カナダのハイスクールへ留学しました。そこで驚いたのは、 在学中に48時間のボランティア活動をしなければ卒業できないのです。
- 松本会長
- 生徒全員ですか?
- 森さん
- はい。どんな活動をするかは自分で決めます。ただ、卒業までに最低48時間、授業やクラブ活動以外の時間で、ボランティア活動をしなければならないのです。最初は単位をとるためにしかたなく取り組むのですが、行っている間にボランティアの意義や自覚がめばえてくるのですね。ハイスクール時代からボランティア活動を行うなんて、日本では考えられなかったので、チャリティやボランティア活動に対する意識が違うなとカルチャーショックを受けました。
- 松本会長
- 若い頃から積極的に行うので、チャリティやボランティア活動がより身近になっていくのでしょうね。
- 森さん
- まさにそうです。
- 松本会長
- ハイスクール時代やミス ユニバース時代、森さんはさまざまなチャリティ活動をされてきたわけですが、いまでも記憶に残っているものってありますか?
- 森さん
- ミスユニバース在任中ですが、エイズとHIVに関する啓蒙活動に取り組んでいました。毎年、12月1日、ニューヨークでは世界エイズデーという大きなイベントが開催されます。各国の人が集まってパレードを行うのは有名ですよね。それは賑やかなイベントです。セントラルパークでマラソンも行われます。ランナーが同じTシャツを着て走るのです。その開会宣言のとき、大会の会長が、突然何万人もの前で、何年も黙っていたが自分はゲイで、HIVに感染していることをカミングアウトしたのです。
- 松本会長
- 突然ですか。
- 森さん
- 私も演壇の会長の横にいたのですが、そんなこと誰も知らなかったので、みんなびっくりして。
- 松本会長
- そりゃそうでしょ。
- 森さん
- その会長は、今日、こんなに多くの人々が走ってくれる姿を見たら、ぼくはひとりで闘っているのではない、ひとりで苦しむ必要もないと実感したと言いました。HIVやエイズ啓蒙のために、こんなに走ってくれる人がいることに感謝し、これからも心をひとつにして、いっしょに偏見をなくし、生きてゆくための薬の研究や開発に協力していきましょうと呼びかけたのです。
- 松本会長
- みんな大興奮だったでしょう?
- 森さん
- はい。大盛り上がりでスタートしました。