AS A RUNNER ランナーで参加

岡田先生の安全に走ろう講座セルフレスキューについて

監修:岡田 邦夫(オカダ クニオ)
大阪マラソン医事・救護専門部会委員長
公益財団法人日本体育協会公認スポーツドクター
一般財団法人大阪陸上競技協会理事 医事部長

セルフレスキューについて

メディカルチェックと健康管理

健康のために始めたマラソンで生命を落とすようなことになってしまったら本末転倒です。突然死は、潜在する基礎疾患を把握し、リスク要因を排除することによって予防することが可能です。万一、心臓が突然停止するような事態が起きても、CPR《胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸》やAED(自動体外式除細動器)など適切な救命措置を行えば、生命をとりとめることができ、日常生活が普通に送れるまで回復することは十分可能です。

中高年の場合、心疾患を引き起こす原因となるもの(冠危険因子:高血圧、糖尿病、喫煙、メタボリックシンドローム等)を持つ人が多くなるので、マラソンレースに挑戦するのであれば、持病のある人はもちろん、持病のない人も事前にメディカルチェックを受けておくと安心です。もちろん普段からの健康管理も大切です。練習は体調と相談しながら運動量を調節し、体調がすぐれないときは積極的に休みましょう。特にレース前は睡眠不足と過労にならないよう、十分な休息を心がけるべきです。大量の飲酒は脱水症状を引き起こしやすいのでレース前日は飲まないようにしましょう。

水分&エネルギー補給に留意

脱水症状を起こさずに42.195kmを完走するには相当量の水分補給が必要です。第1回大会ではフィニッシュ後に脱水症状になったランナーが多くいらっしゃいました。レース当日は、朝起きたときから意識して水分を取るようにし、レース中はもちろん、フィニッシュ後も水分補給に気を付けましょう。摂取するのは、効率よく身体に吸収される0.1~0.2%程度の塩分を含んだ水分が理想的です。水分と塩分を必要量とって脱水症状を防げば、けいれんの予防にもつながります。万一、脱水症状が起きれば、涼しい場所へ移動して、嘔吐に注意しながら冷たいスポーツドリンクなどで水分補給しましょう。脳の血流量の低下によるめまいなどの症状が出れば、脚を少し高くして横になれば下肢の血液が心臓に戻りやすくなり、下がっていた血圧が上がり、症状が改善します。しばらく休んでみても筋肉のけいれんやめまいなどの症状が改善しない場合は病院に行きましょう。

一般ランナーのマラソンは、エネルギー切れとの戦いといっても過言ではありません。マラソンレースでハンガーノックにならないようにするためには、レース前の食事の取り方に工夫が必要です。レース当日の朝食はしっかり取って、マラソンを走りきるのに必要なカロリーを摂取しましょう。メニューは、エネルギーに変わりやすいご飯や餅などの炭水化物を中心にするのがお勧めです。レース中の空腹感はハンガーノックの前兆です。エネルギー系のサプリメントをウエストポーチなどに入れて携行し、空腹を感じたらすぐ口にするといいでしょう。一方、当日の食事は、腸内で発酵するような食物(例。いも、くり、ブロッコリーなど)は避けるようにしましょう。ランニング中にいわゆる横っ腹の痛みが誘発されることがありますので。

痛みは我慢しすぎない

第1回大会では、中間点を過ぎたあたりから、筋肉痛や筋けいれん、肉離れ等の筋疲労を訴えるランナーが多くいらっしゃいました。レース中に痛みが生じた場合、我慢して走り続けると、後に響くような故障を起こす場合があるので無理は禁物です。ランニングをウォーキングに変え、歩きながらストレッチングをするなどして痛みがおさまるかどうか様子を観ましょう。どうしても痛みがとれない場合は、歩いて完走を目指すか、思い切ってレースをリタイアしましょう。

脚の痛みを予防する対策として大会までに十分なトレーニングを積んで、筋力を鍛えるのはもちろん、レース中によく行われるのは、給水ポイントで水を脚などにかける方法です。水によって過度に上昇した筋肉の温度が下がり、アイシングをしたのと同じような効果が期待できます。スタート前にスプレータイプの外用鎮痛消炎剤をふくらはぎや太ももなどに吹き付けておくというのもひとつの方法です。

マメ・けいれんの対処法

レースも終盤にかかった30㎞地点を過ぎたあたりから、足にマメができたり、けいれんを起こしたりといったトラブルが起きやすくなります。

マメはできてから治療したのでは手遅れなので、スタート前の対策が重要です。マメ予防の第一は自分の足に合ったシューズを選ぶことです。足とシューズとの摩擦を減らすためにワセリンやスプレータイプの潤滑剤を足全体にたっぷり塗ったり、マメのできやすい箇所に絆創膏やテーピング用のテープを貼ったりするのも効果的です。

脚にけいれんが起きたときは慌てずにコースを外れ、ガードレールなどにつかまってストレッチやマッサージを行います。痛みがおさまればレースに戻れますが、いきなり走り出さないで最初は歩いて様子をみましょう。

メディカル情報トップへ戻る